マネジメントとは、いったい何をどうすることなのか?

投稿日 20171204

投稿者 T.K

 

1.「マネジメント」とは、「やりくりすること」「(そこを)何とかすること」

 

(1)「マネジメントが大事」と多くの人が口にしますが、ではいったい「マネジメントとは何をどうすることですか?」と訊ねても明確な回答が返ってきません。そこで筆者が悩んだ挙句たどり着いたのは「マネジメント」とは「やりくりすること」であり、「(そこを)何とかすること」であるという結論です。

 

(2)「やりくりすること」というのは、家庭の主婦が少ない収入を、家族の最大幸福のために「やりくりする」のと同じです。企業経営で言えば「入る(収入)を計って、出る(支出)を制す」ということであり、経営資源を投ずべき事業の「選択と集中」という意味です。

 

(3)「(そこを)何とかする」というのは、「現実的に解決する」という程度の意味です。決して「無理が通れば道理が引っ込む」式の解決でも「足して二で割る」式の解決でもなく、一見矛盾・対立するように見える両者から、より「上位の現実解」を導き出すことです。

 

2.ところでドラッカーは何と言ったか?

 

 …ところで、「マネジメント」で有名なドラッカーの説明を引用すると下記のとおりです。(「P.F.ドラッカー経営論集」ダイヤモンド社)

 

 □ それはひとつのモノの考え方である。

 □ 人間にかかわることである。

 □ 共同して成果をあげることを可能にすることである。

 □ 強みを発揮させ、弱みを意味のないものにすることである。

 □ 組織にとって不可欠である。

 □ 風土と深いかかわりを持ち、その方法は大きく異なり得る。

 □ 組織の目的や価値や目標を、検討し決定し明示することである。

 □ 意思の疎通と個人の責任を確立することである。

 □ 成果をつねに測定し、評価し、改善していけるようにしておくことである。

 □ 成果を組織の外に実現することである。

 

3.組織管理の機能としてのマネジメント

 

 …以上のような「議論」を踏まえて、筆者が再整理した「組織マネジメント」の機能は以下の通りです。

 

 (1)デシジョン(または選択)Decision

 … あらゆる「現在」は「過去」に行った「選択」(おそらくは二者択一)の結果です。組織の今日および将来の有り様は、日々の経営判断に基づく「選択」の結果なのです。

 

(2)オリエンテーション(方向付け)Orientation

 … 組織とは何らかの目的を達成し、価値を実現しようとする人たちの協働(共同)体ですから、その目的や価値がどのようなものであるかを明確に指し示さなければなりません。

 

(3)モチベーション(動機付け)Motivation

 … 組織の目的の達成や価値の実現に向けて、組織を構成する人たちを動機付けることです。個々の構成員にとってはそれらが同時に自己成長や自己実現につながることが必要です。

 

(4)エデュケーション(成長の促進)Education

 … 組織を構成する人たちが組織の目的の達成や価値の実現のために組織協働的により良い仕事をしようとすることを通じて社会的・人間的にも成長することです。

  

(5)コミュニケーション(意思疎通)Communication

 … 組織的協働を行なう上で、組織構成員が組織的な目的と価値を共有化することは必要不可欠です。そのための情報や意見の交換を自由に行うことが必要です。

 

(6)エヴァリュエーション(評価)Evaluation

 … 個々の組織構成員の仕事のプロセスとアウトプットに対して適正な評価を行い、それをフィードバックすることは組織的協働の適正化に必要不可欠です。

 

(7)オーガナイゼーション(組織化)Organization

  … 目的達成と価値実現のために仕事(インプット-プロセスーアウトプット)を連鎖させ、仕事と人の組み合わせ、人と人の組み合わせを適切に行うことです。

 

(8)PDCA(Plan - Do - Check - Action)

 … 「マネジメントする」ということは、言い換えれば、組織の目的達成と価値実現のために、個々の構成員から組織全体のレベルまでの「PDCAを廻す」ということです。

 

(9)ソリューション(解決)Solution

 … 個々の構成員のレベルでも組織目全体のレベルでも、目的達成と価値実現のプロセスにおいて生じる様々な障害や問題を解決してこそ所期のアウトプットが得られます。

 

 (10)サクセッション(承継)Succession

 …  「人が変わっても組織は変わらない」のが組織の原理です。また多くの「組織」は「公器」です。常に「自分がいなくなっても良い」状態にしておくべきです。

 

<追記事項>「上司」とは「何もしない人」でもなく「何でもする人」でもない。

 

①上司は何もしない人ではない

 

 仕事に対する見識も考えも方針もなく、良い仕事をしようとする意思もない。部下に対する指示も支援も配慮もなく、部下を育てようとする意思もない。ただ部下に仕事を「丸投げ」し、「割振る」だけの上司は、いずれは部下や組織から見放されるでしょう。

 

②かと言って何もかも自分でやる人でもない

 

 しかし一方で、仕事を抱え込み、自分の能力のみが頼りで、部下の言うこと為すことが気に入らず、何でも自分でしないと気がすまないような上司は、結局たいした仕事も出来ず、部下も育たず、何もしない上司と同様に、いずれは部下や組織から見放されるでしょう。

 

③上司は「人と組織を通じて仕事をする人」であり「仕事を通じて人と組織を育てる人」

 

 そもそも組織や企業は何らかの目的を達成し、何らかの価値を実現しようとする人たちの協働体なのですから、「人と組織を通じて仕事をする(成果をあげる)人」が必要であり、「自分は何もしない人」や「自分で何でもする人」は、企業における組織的な協働そのものに向かないのです。

 

 企業における組織的な協働とは、人と人が理解や協力や信頼を相互に交換しながら、共通の目的の達成や、共通の価値の実現のために、自分のアウトプットを相手の最善のインプットにつなげながら、組織としてのゴールにつなげていくことなのです。

 

 上司は、そうした組織的協働が上手く行われるように、その要として、人と組織から、より多くの理解や協力や信頼を引き出しながら、組織の目的の達成や価値の実現に寄与貢献し、同時にそれを通じて人と組織を成長させる人なのです。